1. 発明と事業化(電球の例から考えること)

発明と事業化
(電球の例から考えること)

皆さんは「電球を発明したのはエジソンだ」と思っておられるでしょうか。

・1802年:Sir Humphrey Davyは、電線に電気を通すことで光が発することを見つけています。

・1860年:Sir Joseph Wilson Swanは、減圧したガラス球の中にニクロム線を入れて電気を通すことで、発光を強くすることに成功しました。この特許が認可されたのは1878年です。

・1881年:エジソンは、研究者たちと電球の耐久性を上げる取り組みを進めるとともに、発電/送電システムを構築して電球を発売。

つまりエジソンは、電球に関して言えば「発明した人」と言うよりも「改良、改善をした人」「事業を興した人」と言えるでしょう。エジソン自身も「自分が電球を発明した」とは思っておらず、「自身の最大の発明は送電システムだ」と語っていたそうです。

エジソンと開発を進めていた研究者が「何通りもの材料テストを重ねたにも関わらず上手く行かなかった」と報告したのに対し、エジソンは「そこに解がないことが分かったのだから、成果だ」とか言った話は有名ですね。

以上のことから私は、以下のようなことを思います。ほとんどは、NHKの「プロジェクトX」でも語られていることですが。

・最初の発明/発見/発想から、商品ができあがりビジネスになるまでには、長い年月がかかること(電球の場合は80年)。

・その陰には、日夜「耐久性が上がる材料を探索する」といった地道な活動があること。

・有用な商品システムを構築するには、多くの試行錯誤が必要であること(試行錯誤を如何に効率化するかが重要課題ですが)。

・イノベーションを生むには、失敗を評価する風土や仕組みも必要であること。

・商品が売れるようにするには、キーとなる1つの発明/発見/発想だけではなく、多くの周辺技術開発や、発電/送電システムといったインフラ環境の整備/構築が必要であること。

事業を継続し成長させていくイノベーションを創るには、革新的な発明やアイデアも重要でしょう。しかし一時、注目を浴びる発想やアイデア発言をした人だけでなく、これを支える総務業務やインフラ整備といった周辺活動に、もっと陽の目が当たったら良いのに、と思わずにはいられません。この意味で、発明者や発見者のみならず、事業化においてキーになった業績を上げた方にもノーベル賞が授与されるのは非常に好ましいことだと思っています。

<参考図書>
「誰が本当の発明者か」志村幸雄
「大人のための偉人伝」木原武一 
「失敗学のすすめ」畑村洋太郎